一足早い収穫の秋に

 ご多分にもれず鹿追町民も日本列島に襲い来る猛暑を堪能しています。
 春蝉の時雨れが一頻り降り注いだ季節も遠く過ぎ去り、防風林に守られるように広がる漆黒の大地には、寸分たがわぬ作物の畝が地平線に向かって伸びています。深緑の大地も今は黄金色に色付き、日本の穀倉地帯との名を欲しいままに超大型の収穫機コンバインが重低音を響かせながら小麦の収穫を担っています。間もなくジャガイモ収穫の季節に入ろうとしている十勝鹿追町は、豊穣を予感させる風情に溢れています。
 風情といえば、一昨年からいわれていたNHK連続テレビ小説100作目「なつぞら」も果てしなく広がる十勝の風情がお茶の間の人気を博しましたが、今は時を越えて東京を舞台として早や終盤を迎えようとしています。ネットを検索すると山田天陽役の吉沢亮さんの人気沸騰が止まらず、早く再登場して欲しいと・・・。その願いがかなってか、今週に入り再び存在感のある姿を見せてくれています。天陽の人物造形は神田日勝をモチーフとされていることが拡散され、当館入館者の増加も止まりません。来館される皆様には、十勝のなつぞらに生きた神田日勝の時代の風情を作品から感じ取って頂きながら、広々とした台地の旅を楽しんでいただいています。
 今年8月25日に予定されている当館神田日勝を偲ぶ「馬耕忌」プレミアムトークショーにお招きする脚本家の大森寿美男さん・俳優の山田天陽こと吉沢亮さん・NHKのドラマ制作統括磯智明さんらの情報も瞬時に国内に知れ渡り、600席の会場に3千数百名の希望葉書が寄せられました。つむじ風のようにふいているこの風を一過性に終わらぬよう戒めながらお客様をお迎えするこの頃、お喜びの当選者の皆さん・落選者の皆さんにもご案内を差し上げますが、どうぞこれを機に益々神田日勝のファンでいていただきたいと願っています。
 神田日勝は短命でしたがドラマでの山田天陽も短命?等など…ネット上では多様な質問・疑問・ネタばれ情報などが飛び交っており、読むほどに何を信じて良いのか・・・。残り少ない放送回にドラマの結末を期待しながら、一足早い十勝の収穫の秋におはこび頂いた皆様をお迎えしています。

 神田日勝記念美術館館長  小 林  潤