こんな時だからこそ「躍動する十勝の美術作家展」

 日本中がコロナ禍の渦中にありますが、開催中の「神田日勝 大地への筆触」には道内外各地から連日多数お越しいただき、安全性に細心の注意を配しながら心からの歓迎と感謝の思いを笑顔でお返しする毎日です。
 さて、十勝美術作家の活動の歴史は昭和2年の平原社美術協会結成を大きな節目として、以降、紆余曲折を経ながらも作家相互に切磋琢磨を積み重ね十勝の芸術文化の裾野の広がりを形成してきた事実に象徴されます。
 神田日勝は19歳となる1956年に第31回平原社美術協会展に初出品初入賞し、1959年には会員推挙。翌年以降は全道展・独立展などにも出品し、さらには全道展地区作家展の創設とともに全道展巡回展の開催の中核となって奔走し、十勝の美術界を担う作家諸氏とともに十勝を牽引しましたが、志半ばにして32歳を一期に夭逝したのです。
 当館では1993年の開館以来、日勝研究をはじめ日勝が奔走した十勝の芸術活動推進にも重きを置いてきましたが、特に今年は日勝没後50年という節目の年に当たり、全十勝の美術作家が一堂に会する展覧会が実現したことは真に意義深いものと受け止めています。
 しかし、ここに来て誰もが予期せぬ新型コロナウイルス禍が地球全体を襲い、作家は勿論のこと社会全体が不安と閉塞感に苛まれる状況に直面しています。十勝の美術作家で組織いただいた当実行委員会でも、実施の可否について賛否両論が飛び交いましたが、
 「こんな事態の時だからこそ、十勝の作家の心意気を見せよう」
との合意に達し、特別展示の神田日勝作品をはじめ58名に及ぶ作家の出品の賛意が得られ、現在準備が急ピッチに進んでいます。
 日本中がコロナ禍で閉塞感漂う生活を強いられる中で、せめて人々が芸術を楽しむ空間を演出したいとの作家皆さんの心をこめた手作りの「躍動する十勝の美術作家展」です。日勝が生きた時代から半世紀、時を超えて同じ十勝に生きる作家の躍動に乞うご期待です。
 ※前期9.11(金)~10.11(日) 後期10.13(火)~11.15(日)

 神田日勝記念美術館館長  小 林  潤