こうして完成した「吉沢亮音声ガイド」 その1

 2020年3月。神田日勝作品音声ガイドが完成しました。
 今当館では、吉沢亮さんの声がまるで館の主のように優しく穏やかにご来館の皆様をお迎えしています。
 今回は、吉沢亮さんによる音声ガイドができるまでを振り返ります。
 2018年秋。俳優の吉沢亮さんがお忍びで当館を訪れました。ドラマ出演の役作りのためだったのでしょうか。
 同年12月。某紙国宝級イケメンランキング首位を獲得した吉沢亮さんが、二度目のご来館。某月刊誌の撮影に訪れたのですが、この時点で、吉沢亮さんが翌年4月からのNHK連続テレビ小説100作目の「なつぞら」に出演予定であることが当館にも聞こえていました。実在の神田日勝がモデルとなっているとのうわさもネットで流布。NHKに確認すると「モデルではありません。問い合わせにはあくまでもモチーフと回答して…」とのこと。
 展示室での吉沢亮さんは、作品を食い入るように見つめていました。日勝の作品の感想をお聞きすると「格好いいですね。僕は風景画が好きです」と屈託なく話してくれました。
 美術館内部では、このご縁を機に吉沢亮さんに当館神田日勝作品の音声ガイドをお願いしては、との案が持ち上がりました。しかし、ギャラの設定・契約内容・スタジオの選定などどれをとっても分からないことだらけ。町の理解を取り付けるところから始まり、予算獲得にも動きました。同時進行で所属事務所との折衝も始まり、特別な配慮のもとに了解が得られました!
 2019年3月。吉沢亮さんが日本アカデミー賞新人俳優賞に輝く!
 2019年4月。「なつぞら」放送開始!
 開始早々、ノートに馬の絵を描く少年「山田天陽」が現れ、なつの心が引かれていく。特に「青年山田天陽(吉沢亮さん)」が登場して以来、「モデルになったのは神田日勝さんですか?」といった多数の問い合わせ!同時に当館入館者も急増!
 2019年8月。「馬耕忌」に吉沢亮さんを!
 ドラマとのご縁から、当館恒例の神田日勝逝去記念日「馬耕忌」に吉沢亮さんを呼べないかとの案も飛び出し、恐れ知らずの内部関係者が吉沢亮さん所属の事務所と接触。奇跡的に日程調整が叶い、併せて出演者も脚本を手掛けた大森寿美男氏、NHKチーフプロデューサー磯智明氏に決まり、当日の8月25日は全国からの応募者で大盛況。このように短期間に深いご縁をいただきながら音声ガイドの制作は進みます。ガイド対象作品が決まり、解説内容は当館学芸員を中心に大筋が完成。
 多忙極まる吉沢亮さんとの収録日程が決まらないまま明けて2020年。新型コロナウイルスが札幌・東京に蔓延しはじめ、ギリギリのタイミング且つピンポイントで収録日は3月2日に決定しました。

 つづく

 神田日勝記念美術館館長  小 林  潤