館長コラム2015.11.1

ここしばらく調子が悪く、恒例の独立展・二紀展、それに付随する展覧会を見に上京できませんでした。何人かの画家の方々からもご案内を頂戴していましたが、楽しみにしつつも実見はかないませんでした。それでも月末第90回道展と北の日本画展と若干の個展を見に札幌には足を向けました。ただ楽しみにしていた道展の懇親会はどうしても欠席を余儀なくされました。十勝の作家が力作を出品している会場風景を見えるにつけ、交流の場に参加できないことは残念でなりません。
来年度の予定をほぼ立て終わりました。堀越千秋・守美音・小野月世・萬鉄五郎美術館所蔵畑山昇麓コレクション展を二階展示室で、第一期常設展に合わせる形で坂東優彫刻展を、「尾道美術館の神田日勝展」に神田作品を出品するための前後の期間に「全道展十勝支部二十周年記念展」「北海道現代具象展」「グループ環」展を日勝館全館で開催するとともに、8月鹿追町民ホールでは鹿追出身の画家本城義雄氏の作品展を開催するべく、考えております。また川岸学芸員は特別企画展「神田日勝と独立展」の企画を(5月~7月)、年明けには尾道市立美術館との交換展「尾道市立美術館所蔵作品展」の作品選定に奔走する予定です。
また窪島誠一郎館主のご好意で、「馬の絵作品展」の入賞巡回展を来秋「信濃デッサン館」に隣接する「槐多庵」で開催することができそうです。開館以来構築してきた人間関係が各種事業に北海道の枠を超えて広がりを与えてくれます。
末尾にひとつ。一昨年笹川小学校の開校記念事業として、日勝と親しかった地域の人たちが、日勝について語るという企画がありました。ところが日勝が全道展出品作家であるということを語る人がほとんど皆無に近い状況に驚かされました。道展との混同は日勝の存命中からありましたが、「日展」出品作家という言葉にはびっくりしました。また美術館開館後の評価の中で、一番印象に残った作品を問うと「室内風景」をあげる人が多かったことです。昔僕が取材に地域を回ったときは「馬」とか「死馬」「牛」の類の印象を語る人が多かったのですが、開館以来の喧騒の中で後からの情報が刷り込まれ、代表作の「室内風景」が記憶の中心を占めてしまったことです。あれから40年、関係者の記憶も大きな変貌を遂げています。

神田日勝記念美術館長
菅 訓章