第25回「馬耕忌」(奈良美智講演会)へのご来場に感謝!その2

 質疑応答では、「作品にロックを感じた。音楽と制作の関係って?」の質問に、「キャンバスに描く絵の場合は、「試練」を与えている。(描き始めの状態から)絵が変化していって、『これだ』と思うものが見えた瞬間、完成に向かって描きあげていく瞬間には、実はもう音は消えている。さっきまで爆音でかかっていた音楽が消えても、それすら分らないくらいの状態で、絵を完成させる。そうじゃないと音楽を越えられない気がする。逆に紙に描くドローイングは、音楽を聴きながら描いて、「バカ」とか、言いたいことがすぐに出ちゃう感じ…。」など、どの質問にも飾らずに(聴衆が専門家集団でないこともあり)平易な言葉で聴き手に真摯に向き合う姿勢が感じられて、会場には常に柔らかな雰囲気が醸し出されていきました。
 講演会の次には十勝で演奏活動を展開している田中光俊氏によるクラシックギター演奏が披露されました。往年の若者であれば誰でも知っている「禁じられた遊び」など懐かしい曲の数々に酔いしれる時間でした。
夜に入り、奈良氏を囲んでの交流会では道内外各地からの参加者が談笑しながらの時間が流れ、ご本人からのスピーチや参加者との掛け合いともなるテーブルスピーチで大盛り上がりの雰囲気で結ぶことが出来ました。きっと皆さんにご満足いただけたものと自負しているところです。
 馬耕忌は、当館のみならず今後の小美術館活動の在り方について考える場でもあります。没後50年(2020年)を目前に、神田芸術の高まりを感じつつ開催した馬耕忌でしたが、会場に溢れた全国各地から集った奈良美智ファン・神田日勝ファンから、「これからも美術館の新たな活動に期待しています。」との声をいただきました。
 当館を訪れた皆さんが、都会の喧騒から解き放たれ、自然に回帰し生きることへのエネルギーを感じられるような館であり続けなければと再認識しているところです。
 抽選でのご参加となり、落選された方も数多くおられました。主催者として申し訳なく思っておりますが、これからも折に触れて皆様に情報提供してまいりますので、変わらぬご支援・ご参加をお待ちしております。

 神田日勝記念美術館館長  小 林  潤

 ※美術の窓2017年11月号『視点』に一部掲載