試される美術館

 新型コロナウイルスとの闘いの最中に2020年度の幕が上がりました。今ほど、平穏の日常がいかに幸せであったかを感じることはありません。コロナウイルスが確認され世界に広がり始めた頃から2か月が経ち、今は周囲に陽性反応者が確認されていない北海道十勝にあっても、明確な治療薬が現れない現状にあっては「感染」=「死」のようにも思えて、日常での見えない脅威への恐怖は増すばかりです。
 同時に医療現場において24時間戦い続ける関係の方々に心から感謝し、皆様のご無事を祈っています。
 このような有事の際には、統率された社会的な行動が求められますが、国や地方自治体・医療関係・マスコミ・経済団体などあらゆる業種の連携と国民個々の行動が事態を大きく左右することは、他国の事例からも明確なことから、末端の私たちの心構えこそが国を守ることに直結していると強く感じています。
 ドイツの芸術家ヨーゼフ・ボイスは、「あらゆる人は芸術家である」と表現しましたが、芸術とは「感動」を人に伝えていく事ともいわれます。緊急事態の向こう側に芸術活動とその感動があるとすれば、今はそれを乗り越えた時のためにしたたかに企画を練るときなのでしょう。この後に感動を多くの人々と共有するために美術館は存在し続けることが必要なのだと自負しています。
 当館のように小さな美術館ができることは限られますが、今は美術館を取り巻く情報を共有し感染拡大を防ぐ手立てを講じながら、再開への万全の体制を整えることにつきます。人類とウイルスとの地球規模の戦いが続く中で、美術館もまたあり様について試されているのかも知れません。
 緊急事態が長引く予測の中、めげずに乗り切りましょう。

 神田日勝記念美術館館長  小 林  潤