謹賀新年

 松の内も明け誠に穏やかな新年を過ごす北海道にも、強烈な二つの低気圧襲来で一気にお屠蘇気分も吹き飛びました。
 コロナウイルスとの戦いも続いていますが、ともあれ、皆様にとりまして希望溢れる一年になりますようお祈りしています。
 さて当館は1993年開館から今年が30年目にあたり、現在展示室では皆様からご希望が寄せられていました親子展(日勝・絵里子展)を開催中です。さらに今年4月からは、これまた待望の「神田一明・日勝展」(兄弟展)を開催します。
 旭川在住の一明氏宅を訪問させていただき幼い頃のお話しをお聞きしました。当時住んでおられた笹川東部付近は幹線道路とは程遠く、弟日勝や200メートル離れた隣家の子と連れ立って笹川小学校への通学。中学生になると6キロの道のりを1時間半かけて下市街にあった鹿追中学校へ。その頃の道はでこぼこでぬかるみ、冬は降り積もった雪で道が消えてしまうこともしばしばです。除雪車もなく、純白の雪原にどこまでも延びる二本のレールのような馬橇の跡とそれを曳く馬の足跡を頼りに進みます。道路を横切る踏切に辿り着くとそこからは雪をかき分けて走る北海道拓殖鉄道の線路を通学路として利用する子らもいました。
 それから70年余りの時が過ぎ、鹿追町に開拓の槌音や鉄道の面影は消えましたが、大規模化し安定した農業経営、舗装道路にトラクターや大型除雪車が行き交い資源循環型農業の確立や豊かな自然環境を生かした観光が展開されるなど、発展が続いています。折からのコロナ禍にあっても控えめながら、昨年9月、町は開町100年の祝典を挙行しました。
 開館30年目の正月も明け少し長い北国の冬休みを終えると、当館に隣接する小学校から子供たちの歓声が響きます。一明少年の時代も今も子どもたちの存在は、明日のわが町の希望です。今年も人々が一体となって子供を守り育てる町であり続けて欲しいと願いつつ、皆様のご来館をお待ちしています。
 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 訂正:前回の館長コラム「ウインターコンサート」中、「今年16回目」としていますが、「今年17回目」の誤りでした。訂正しお詫び申し上げます。

 神田日勝記念美術館館長  小 林  潤