神田日勝記念美術館の夏の展覧会
神田日勝記念美術館友の会は本年度創立二十周年を迎えた。
4月から友の会を中心とする展覧会事業実行委員会は、精力的に各種展覧会事業を展開している。
最初はゴールデンウィークの期間、美術館を会場にした30人余の画家の自画像展「新世紀の顔・貌・KAO」と、町民ホールの大ホールを会場とした教授陣を主体とした「東北芸術工科大学の美術家たち」。
自画像展は美術評論中野中氏が公募展等の縛りに関わらず30人の画家・美術館に出品を依頼して全国の画廊を巡回するかたちで開催された企画されたもので、本年で10回展を数え、延べ300人余の作家の自画像が描かれたことになる。
3回展からわが美術館の巡回に参加することになり、今回の伊藤光悦氏(道展)を含む北海道在住の画家もメンバーに加えられたことは特筆してよい。
東北芸術工科大学展は自画像展で紹介された木原正徳氏(二紀展)の縁によるもので、武蔵美・多摩美・筑波という現在最も評価が高い美術系大学の指導者による展覧会シリーズの一環である。
大学の指導者が神田日勝記念美術館と日勝の画業に触れ後進に伝えることを主眼とするものだが、特に同大の山田修市教授は日勝と同じ独立展に所属する画家で、その画業を高く評価する立場にいることを知り意を強くした。
協議のため山形を訪れたとき、遭遇した大学院生の展覧会場で紹介された道央出身の面々が誰も日勝を知らなかったという事実を実見するとき、世代間のギャップを痛感するとともに、美大に期待するところも大きいということを認識した。
山田教授の配意で将来同大での日勝作品の修復という可能性に道を開いた展覧会であった。
8月は二本の展覧会を企画した。
自画像展で親交の深い中野中氏は、現在銀座の画廊を会場に結社の枠を超えた6のグループ展を主宰している。
「選ばれし者たち」展は春終了した「抽象の行方」と長野県出身画家による展覧会と、今夏立ち上げられた「超我」の3展を除く4展による構成になっている。
全国の様々な画家の結集と、銀座の画廊の雰囲気が伝えられればという思いがする。
締めくくりは「北海道二紀作家展」。
従来札幌の画廊で行われていた展覧会であるが、所属作家33名のうち7名が十勝在住の二紀出品作家ということから、十勝の会場でそのことを認識してほしいというのが願いでもあった。
同時に、二紀は僕にとって欠かすことのできない展覧会でもある。
僕は日勝が生前制作活動の場としていた「独立展」に欠かさず足を運んだ。
その時同時に開催されていたのが、東京都美術館では「二紀展」と「自由美術展」、会場が国立新美術館に移動してからも「二紀展」は必ず隣の展示室で開催されている。
そのため「独立」を見ることは「二紀」を見ることと同じことを意味した。
その色彩、画面構成、独立に比して十勝の人々はその魅力に必ずや引き込まれるに相違ないという確信を持っている。
小笠原洋子・村上陽一という準会員を含め多くの出品作家を擁する二紀の作品世界をぜひご鑑賞いただきたいと思う。
最終日には午後1時から玉川信一筑波大学大学院教授による作品講評会も、公開で行われる。
画家を志す人にとって最高の学習の場でもあろう。
菅訓章(神田日勝記念美術館長)