第25回「馬耕忌」(奈良美智講演会)へのご来場に感謝!
少し前のお話しになりますが、神田日勝記念美術館恒例の馬耕忌に奈良美智氏をお招きし講演会を行いました。
奈良美智氏が初めて当館を訪れたのは昨年(平成28年6月)のことでありました。
直後のご自身のツイッターに「神田日勝は、上京したての18の頃に、同じく十勝から上京してきた友人が教えてくれた画家だ。」さらに、「神田日勝記念美術館で絵を観た。初期の『死馬』と『牛』がやっぱり素晴らしい」「東京近代美術館に神田日勝の絵が所蔵されていたら、自分が選んだ所蔵作品として麻生三郎と松本俊介の間に展示していたと思う。眼ではなく、肌で感じられるようなリアリズムがある素晴らしい絵なんだ・・・。」と綴られています。
世界で活躍される現代美術家奈良美智氏から高く評価いただいたことは当館の事業推進にも大きな力となるものでありますが、これらの氏の発言が縁で、平成29年8月27日、第25回目となる「馬耕忌」で、待望の奈良美智講演会が実現したのです。
今更ですが「馬耕忌」とは、北海道十勝鹿追町に育ち、農民として画家として生きた神田日勝の命日を記念する神田日勝記念美術館のイベントです。
神田日勝は終戦の前日に鹿追町に疎開し、開拓農家の次男坊として育ち、中学校卒業と同時に家業の農業を継ぎました。厳しい開拓農家の仕事の合間に作品を制作し続け、全道展、独立展などに立て続けに入選・入賞し始めましたが、酷使した体は病魔に犯され、若干32歳の若さで他界しています。
彼は、死の少し前に「結局どういう作品が生まれるかは、どういう生き方をするかにかかっている。」との言葉を残しましたが、常に自らの生き方をキャンバスにたたきつけた生き様とその作品は今も美術館を訪れ鑑賞する人々の心を惹き付けて止みません。
奈良氏の講演「記憶していくこと、それを形にすること」の中では、今から40年前「神田日勝」という画家の図録を見せてもらい、「絵をみたら、すごく来るものがあった」、「これは自分が知っている世界だ」、「忘れかけていたけれど身体にのこっているものだ」と思ったと回想しました。
また、ふるさと青森の原風景や大自然の厳しさに耐えて生きた氏の幼少時からの生い立ち、作品制作のプロセスなども画像をふんだんに使用して紹介されました。
つづく
神田日勝記念美術館館長 小 林 潤