謹賀新年
明けましておめでとうございます。
誠に穏やかに幕を開けた令和初めての正月であります。皆様にとりまして明るく幸多き一年になりますことを心からお祈り申し上げます。
さて、昨年の当館はNHKのドラマ「なつぞら」放映の影響も手伝い本当に沢山の皆様にご来館いただきました。好演の吉沢亮さんの人気と相俟って「山田天陽」のモチーフとなった神田日勝の名はたちどころに全国津々浦々に知れ渡りました。終戦の頃に鹿追に入植し独自のリアリズムを模索し続け、32歳の若さで逝った日勝の渾身の作品の数々が今改めて注目を集めています。テレビ・新聞をはじめ様々な美術関係冊子でも取り上げられ、本年予定されている日勝没後50年を記念する東京ステーションギャラリー・神田日勝記念美術館・北海道立近代美術館での巡回展の準備も着々と進んでいます。
ここで然別湖と神田日勝を少しだけご紹介。
鹿追町といえば、然別湖という湖で知られています。釣り好きの神田日勝は真冬でも自宅から20㎞も離れた山の中腹にある湖にオショロコマを釣りに、ある時はスキーで、ある時はバイクで通いました。厚さ40センチにもなる氷に穴を空けて釣り糸を垂らします。そこに大自然と戦う開拓民とは別の大自然と対峙する日勝がいました。無心に釣り糸を垂れるその時間は、厳しく終わりのない開拓の日常を背負う彼の、何物にも代えがたい安息の瞬間であったことは想像に難くありません。そして、独自のリアリズムを模索し続けた彼にとってとても貴重な時間であったと想像できるのです。(現在禁漁期間があります)
もう一つ、現在の然別湖といえば「然別湖コタン」が知られています。1月末から3月中旬まで、凍結した湖の上に出現する氷の村です。氷上露天風呂や氷で作られたアイスバー、氷のチャペル・アイスロッジでの宿泊体験など、非日常の冒険が楽しめます。
今年の冬はこのような大自然を楽しみ、お帰りには鹿追市街にある神田日勝記念美術館にお立ち寄りいただき、至福の時をお過ごし下さるよう、職員一同心からご来館をお待ち申し上げています。
神田日勝記念美術館館長 小 林 潤