謹賀新年
令和6年の幕が開けました。
おめでとうの言葉を発する間もなく、新年早々令和6年能登半島地震・旅客機と海上保安庁の航空機衝突事故等の続発で多数の犠牲者が出るなど、暗雲立ち込める今年の我が国の幕開けとなりました。亡くなられた皆様に衷心より哀悼の意を表しますとともに、一刻も早い被災地の復興をご祈念申し上げます。
さて、開館30周年を迎えた当館の今年度も残すところ3か月を切り、今は新年度に向けての準備に余念がないといったところですが、今年度の当館の大きな出来事といえば新発見の日勝作品が2点見つかったことが挙げられます。夭折の日勝作品数は限られており、没後53年に見つかることは奇跡に近いことなのですが、この作品は以前日勝の父が親戚にプレゼントするために日勝に描いてもらったものであることが分かりました。
作品は静岡県在住のAさんが所蔵されていました。一点は冬の農村を描いた風景画、もう一点は剝きかけなどの林檎を描いた静物画です。
Aさんは「作品は高齢の自分の家に飾っておくよりも多くの人たちに見ていただきたい。」と、寄贈を申し出られたのでありました。Aさんと連絡を取り合いながら神田ミサ子日勝夫人と共に静岡県でお会いすることとなり、作品は制作から実に54年ぶりにふるさと鹿追町にたどり着いたのでした。世に出た作品が辿る道程は予測し得ぬものですが、制作者のふるさとに還ることとなったこの作品の運命的な道程を喜ぶと同時に、館としてご来館される方々と作品の新たな出会いの場をいかに作るかを模索しています。
当面は現在開催中の2023年度コレクション展Ⅱ×ミニ企画展「日勝×〈文学〉展」に新収蔵作品として展示をさせていただき、多くの皆様方にお披露目をしています。
新たな年にまた新たな発見などの予兆はありませんが、この度の新発見作品のように僅かなつながりから発見に結びつく事例から学び、皆様との出会いとつながりを大切に地道に一歩ずつ前に歩むよう努力する一年とする所存です。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
神田日勝記念美術館館長 小 林 潤