新年度を迎えて

とうとう新しい年度を迎えた。
開館二十周年記念の事業を終え、新たな事業展開を進めていく時期が到来した。
残念なのは頼みにしていた北海道立帯広美術館の鎌田・佐藤両学芸員の札幌転出が急遽決定したことである。
最近薗部学芸員(現在近代美術館)が手を染めた「十勝の美術クロニカル」以来、北海道立帯広美術館は十勝の美術・作家研究に積極的に取り組み、作家の側でも手持ちの資料を同館に納めたいという機運が出てきたところであった。
僕もその動きに引きずられ、最近十勝美術史に僅かに手を染めたところであった。
なぜなら神田日勝に関しても、その活動した時期の原資料が既に入手・閲覧が困難な時期にあり、同時代の作家も既に大方の処分を終えた状況にあり、日勝研究をするとき資料の空白に落胆することが再々であった。
それは十勝の美術史にもあてはまる。
日勝を美術史上に定位する試みと同時に、十勝美術史の構築もまた急務である。
勿論同時代に活躍した画家は現在も精力的に活動している。
しかし年代的には既に薄暮期にあることは確かである。
文字化し公開することは、たとえ錯誤が生じたとしても、僕にも課せられた仕事かもしれない。

神田日勝記念美術館長 菅 訓章