美術スポット駆け巡り ≪前編≫

8月初旬、久しぶりに遠出をする機会を得た。主目的は『花嫁の橇』を寄託いただいている白老町の吉崎千代さんの弔問と、春に福原記念美術館で小品展をしていただいた苫小牧の小笠原実好さんへの表敬であったが、苫小牧と札幌のホテルが今夏は7月頃から安価な部屋の満室状態が続き、旅行会社の確保分とネットの急な空室分でやっと日程を組むことができた。
初日に訪れた主目的の吉崎さんは留守で、訪問したことの標しを残し室蘭市民美術館の「渡辺眞利展」へ。渡辺さんとは大同ギャラリーの個展でお会いして以来、久方の作品との対面となる。東京在住の全道展作家が多く退会し、こういう機会でもないとなかなか作品と出合うことはない。受付で近々北浦晃さんの遺作展が同美術館であると聞いて、北浦氏の訃報以来作品図録を頂戴しながら何の返信もしていないことが気になっていたので、再訪を期すことにして館を出た。続いて北口さんが季節ごとに花でロビーを飾る倶知安町の「小川原脩記念美術館」へ。ミュージアムロードの共同企画展や、初見の小川原作品を駆け足で鑑賞する。隣接するニセコ町の「有島記念館」では「夕張美術館」が所蔵していた作品群を見る。改めて夕張という風土に根ざした作品群の歴史的価値と夕張市美術館の北海道における先駆的美術館活動の果たした大きさを実感させられた。今は夕張中学校に保管されている作品群にもう一度スポットをあてたいという思いがこみ上げる。ただこの3館、時間的なこともあってか入館者が僕一人であったことは寂しい。最後は苫小牧市美術博物館。青森県立美術館が所蔵する作品の選抜展を訪ねる。鑑賞者は多い。ただ主目的は中庭に展示されている首藤晃氏の立体作品。現在帯広大谷短期大学で教壇に立っていると聞いているが、なかなか興味深い作家であると実感した。そして夕暮れの小笠原実好さん宅でそのご厚情に触れた。