神田日勝記念美術館 ブログ

2009/08/29

神田ミサ子さんのエッセーを読んで

カテゴリー: ブログ — 管理人 @ 11:13

日勝の奥様であった神田ミサ子さんが「自分をみがく」というエッセー集を出版された。(美研センター発行)その中に「日勝と私」という一文がある。神田日勝が開拓農民という宿命を背負い生きた中から培われていったもの、そしてそこから生まれた彼の絵の魂を垣間見ることができた気がする。
北海道農民は昔は誰もが開拓も農民であったが、昭和も中頃になると明治、大正時代からの農家と敗戦間際の開拓農民とでは大きな格差があったことは容易にうかがえる。そのエッセーの一節に馬鈴薯の種イモが予定より足りなくって、嫁にきたばかりのミサ子さんが「近所の農家に(種イモがあまっていないか)聞いてくる」といったらいきなり姑に「そんな馬鹿な事やめなさい!」と怒られた。と書いている。開拓農民としての「意地」が伝わってくる。そんな環境の中にいた日勝はその意地を彼の絵に描き込んだのだろうか。「痩せ馬」をはじめ彼の生涯テーマであった馬や飯場の風景など働くものたちへの共感は格差に苦しむ現代社会の投影として僕には感じられるのである。その一方で、「人と牛」「晴れた日の風景」「人」シリーズなどの色彩豊かに描かれた絵の中に家族を持つことができた喜びや希望に溢れ、家族ができ自由に絵を描かせてくれるという日勝の喜びが伝わってくる。同時にミサ子さんにとっても、少女時代からの悩み—自分は何のために生きているのか?—の答えを日勝とともに生きる中に見いだしている。たった8年半で幕はおりてしまったが。

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